強み理論 第1章 強み

最初に、強み理論でいう強みの概念について解説します。強みはいわゆる長所ではありません。能力や才能とも異なります。ここでいう強みは、発掘し、使い、磨き続けることで人生を豊かにする強力な概念です。まず強みの概念を理解し、自分の強みを正しく捉えるための基本となる考えを整理してゆきましょう。

目次
  1. なぜ強みを知るのが大事なのか?
  2. 強みとは?
  3. 脳の作りから見た強み

1-1. なぜ強みを知るのが大事なのか?

自分の『強み』を知り、『強み』を生かす生活や仕事を行うと、自分らしく生きる、自分なりの幸せや成功を手にいれることができるようになるからです。

私たちは、自分自身のことを弱くて、自分に自信の持てない臆病者だと思っています。臆病者である私たちがそれでも強くなろうとするとき、能力を高め、努力して成果を積み重ねようとします。これは謙虚なように見えて「ないこと始まり」の危険な考え方です。努力で成果を積み重ね能力を高めることは素晴らしいことですが、「私など取るに足りない存在だ」と認めているのに等しいからです。

その後、たとえどんなに強くなろうとも、この考え方の根底にあるのは「自分は弱い。ダメな臆病者だ」というビリーフ:信念です。

強みを生かしている人は、「自分はスーパーマンだ」というところから始めています。最初から優れている部分を持っていて、孤高であるということを彼(女)たちは知っています。スタートラインが「自分だけが優れているものを持っている」地点に設定されているのです。
そんな彼(女)らが努力して成果を積み重ねるのは、弱く臆病な自分に別れを告げるためではなく、強く優れた自分を生かそうとするからです。

強みを発掘する(自分の強みを知る)と、「私たちはもともとスーパーマンなんだ」ということに具体的に気がつけます。
そして、その強みを中心に物事を組み立てると、ストレスを感じないままに成果を手に入れる生き方、行動に価値を感じる生活、エネルギーのある心の状態などを手に入れることができるようになります。

1-2. 強みとは?

強み:先天的に「できてしまうこと」。
能力:後天的に「できるようになったこと」。
才能:能力の中でも、同じ努力・練習・訓練によって、他の人より伸びた能力のこと。

「強み」とは、先天的に「できてしまうこと」
努力や訓練なしに、なぜだか自分だけ「いきなり」高いレベルでできてしまうことです。ほとんど苦労せずに、他人よりもスムーズに優位に立つことができる物事のことです。

「能力」は、後天的に「できるようになったこと」。
外の世界(会社や学校など)に適用するためや、自分をうまく運ぶために、身につける物事です。努力や訓練によってできるように「なる」ことです。

「才能」は、能力の一部で、高い能力を指します。
同じ努力、練習、訓練によって、他の人よりもはるかに伸びる能力のことです。

強みと能力の見分け方

強みは、もともと無意識にできてしまうことなので、自覚がありません。
能力は、がんばってできるようになったことなので、ストレス・達成感・満足感などがあります。
高い能力である才能は、表面上、強みと変わらないぐらいにできるようになることがあります。

では、「できてしまうこと」と「できるようになったこと」の違いはどこなのでしょうか? それは、「ストレスがある」か「ない」かです。

ストレスというと範囲が広いですが、能力でできるようになったことには、達成感や満足感があります。「成長した(以前の自分より変わった)」という感じも大きいです。また、努力と訓練によってできるようになっているので、「これだけできるようになった」と承認を求めがちになります。

反対に、もともと「できてしまうこと」は、ノンストレス。 達成感や満足感はありません。もともとできていることなので、「こんなことが?」「まぁ、そんなものかな」という感覚しかおぼえないものです。

1-3. 脳のつくりから見た強み

脳が働くメカニズムは電気信号です。電気信号の通り道が発達している部分が強み、あまり使われていない部分が弱みです。

「できてしまうこと」である強みは、脳の構造からも説明することができます。
脳が働くメカニズムは電気信号です。シナプスという脳内の電気信号の通り道が、脳のどの部分で発達しているかによって人の強みは異なります。

このシナプスは3歳ごろまで脳全体に満遍なく発達しますが、3歳を過ぎる頃から膨大な情報を処理しきれなくなるため、自分にとって必要な情報の取捨選択をはじめます。その結果、脳内でよく使われるシナプスとあまり使われないシナプスの分化が起こります。

よく使われるシナプスは、幹線道路や高速道路のイメージです。電気信号である車がスムーズに、大量に通ることができます。
逆に使われていないシナプスは、舗装されておらず、車が通らないために雑草が生えた小道のイメージです。その道を通行する車は大きな苦労を迫られ、その道を回避するようになります。

「よく使われるシナプスの部分を司る脳の役割」が強みとなり、「あまり使われない部分を司る脳の役割」が弱みになります。

このパターンを繰り返す結果、よく使われる部分はさらに強く、あまり使われない部分は完全に劣化してしまいます。

こうして、強みは何も考えなくても当たり前のようにできてしまい、弱みはどんなにがんばっても人並み以下の成果しか出すことができなくなっていきます。
だからこそ、弱みを克服するよりも、強みを知ってそれを活かすほうが人生により多くの実りをもたらすのです。

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