強み理論 第1章 強み

強み理論でいう「強み」がいわゆる長所や売りとは違うことをお分りいただけたと思います。次に強みにはどのような特徴があるのかを説明します。

目次

1-4. 強みの特徴(1):自覚しづらい、気がつかない

強みは、自分にとっては、息をするように当たり前にできてしまうことなので
●自分では気づきにくく、自覚しづらい
●人から強みを指摘されても本人は否定する という特徴があります。

人は自分があまりにも当たり前に「できてしまうこと」を重要視しません。当たり前すぎて「誰でもできる」と思い込んでいるからです。
実際には自分だけが高いレベルでその物事を行うことができ、多くの場合周囲も「すごい」「うまい」などと評価しますが、「そんなことは当たり前」だと思っているために、本人が強みとして自覚することはほとんどありません。

強みは自覚されにくいことの実例

「客観視」に深い強みを持つある女性は、幼い頃から物事を客観的にみることが当たり前でした。
ですので、母親から怒られたとき、怒られて「怖い、悲しい」といった感情を感じるよりも先に「私は、今、お母さんが気に障る何かをしたんだな」と物事を捉えることができてしまいました。幼い頃にそんなに冷静に物事を考えることは、みなができるわけではありません。
人前でたまたまこの話をした彼女は、周りの全員から「冷静で、客観的な視点がある」という指摘が出たにも関わらず、「いえいえ、そんなことはありません」と否定してしまいました。

これが、強みを指摘されたときにやってしまう行動(状態)の典型的な一つの例です。

1-5. 強みの特徴(2):生活や仕事とリンクしていない強みもある

強みはもともと備わっているものなので、現在の仕事や生活と全く繋がっていないものもたくさんあります。

「よ〜し、強みを見つけて仕事で活かすぞ!」と思って探しても、強みの中には、現在の仕事や生活とまったく繋がっていないものもたくさんあります。

例えば、研修で人に教える仕事をしている方が、「その人が話せば誰でも耳を傾け、なぜかすんなりと行動に移せてしまう」などの「話すに関連した強み」を探そうと思って探しても、見つからないことはよくあります。
そして、反対に「聞く」ということに関連した強みが見つかる場合もあります。

強みが思ったとおりでないからといって、ガッカリしないことはとても大切です。

「こんな強みがあったらいいな。見つけたいな」から始めるのでなく、「現在、自分ができてしまっていることは何か?」を冷静に客観的に、ありのまま観ることが必要になってきます。

強み発掘は、自分の足元から始めます。

仕事にリンクしない強みの実例

ある男性は、「彼が関わると、全てが穏やかで平穏無事に過ごすことができてしまう」という強みを持っていました。
しかし、この強みが発動されると「平穏、安定、安心」が当たり前で、無味乾燥な感じになりがちです。
彼も、日々家族と一緒に平穏無事に穏やかで過ごせることに幸せを感じることができず、何か結果を出せるものを追い求める生活に自ら入っていってしまいました。
このように、強みを無視した反対の生き方は、「自分では“ない”何か」を追い求めてしまう場合もあります。
無視するのでなく、それを生かした方法を探ってみることも大切です。

1-6. 強みの特徴(3):3層構造

強みは、
① 表面的な強み
② 深い強み
③ 本質的な強み
の3層構造になっています。

強みには、3つの階層があります。樹木にたとえると、①表面上の強み=枝葉、②深い強み=幹、③本質的な強み=根っこです。

①表面上の強み<強み強度:弱>

樹木で例えると、枝葉のように、一番表面で分かりやすい強みです。
・目で見て、すぐわかる。明らかにそういう力を使っているよねと、すぐわかる。
・成果に直結している。社会的に、仕事などで使いやすい。他人から評価をされやすい。
といった、特徴があります。
強みの強度は弱く、他の人にもあるものであることが多いです。
強み発掘をすると、はじめに見つかる強みは、たいていが表面上の強みであることが多いです。

②深い強み

表面上の強みの基礎になる強みです。
表面上の強みのいくつかに共通して「こういう背景があるから」これらの表面上の強みを使うことができるのだな、ということが特定できれば、それが深い強みです。

③本質的な強み<強み強度:強>

①②の強みの根っこの部分にあたる、自分の基礎になるいちばん強い強みです。
発掘するのは、ほぼ困難です。

強みを見つけるはじめの一歩は、先天的に「当たり前にできてしまう」ことに目を向けることから始まります。

しかし、「見つかった!」と思っても、似たような強みを持っている人は世の中にたくさんいます。というのも、初めに見つかる強みはたいていが表面上の強みだからです。それゆえ、深く掘り下げていくことが必要です。

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