第4章 強みを最大に生かすために押さえておきたい4つのこと

自分にどのような強みがあるのか分かってくると、最初に自信がつき、そのうち「自己確信」が持てるようになってゆきます。

強みを実際に使って少しずつ成果を出せるようになると、まずストレスや怒りを感じることが大幅に削減されてゆきます。次に、強みが継続され他の強みも使う事ができるようになると、日常生活や仕事に対して好ましい感情が芽生えてきます。心理的にも負担が減り、自分を認められるようになります。

しかし、強みが生かされるには、まだ注意することが4つあります。もしこれら4つのことを無視すると、「強みを生かしているはずなのになぜか思うようにならない」という事態にもなり得ます。注意点を知り、その都度対応すれば、強みを最大に発揮できます。

強みを最大化するために行う4つのことを、順にみていきましょう。

目次

4-1. 弱みは克服でなくカバーする

弱みとは、「どうしてもできない」ことです。ただ単に「やりたくない」という感情や「できない」という能力のことではありません。 強みの発揮を阻み、無力化してしまうものごとをいいます。

脳の構造から見る弱み
人間は、3歳の頃から情報の選択を始めます。必要だと認める情報処理をする脳の部分が発達し、逆に不要だと判断した情報を司る脳の部分は、使われなくなります。従って、不要だと判断した脳の部分は、電気信号が流れなくなります。正確には、信号が流れなくなるのではなく、 迂回するので遅くなり、この部分が弱みとして出てきます。

弱みは、強みになることは絶対にありません。

自分を殺して最大限に頑張っても、成果は中の上程度にしかなりません。弱みに対しては、克服でなくカバーするという考え方が必要です。カバーには、他人の力を借りる、仕事なら外注するなどの方法があります。

ただし、例外として自分で克服するべき場合が3つだけあります。

自分で克服すべき弱み

(1) 命に関わる場合

言うまでもなく命と身体があってこその人生です。健康管理のだらしなさやどうにも関心が薄いといった弱みや、希死念慮に頻繁にとらわれたり薬物に依存してしまうなどの弱みは克服する必要があります。

(2) 弱みが強みの足を引っぱる場合

例えば、「人に伝えることがやたら下手」という弱みがあると、強みを使って出した成果を他人に伝えられず、成果を出さなかった場合と同じことになるケースがあります。これが、弱みが強みの足を引っぱるということです。この場合は、弱みをせめて普通レベルまで引き上げる必要があります。

(3) 弱みを克服しなければ、強みを発揮した成果が得られない場合

(2)に似ていますが、もっと総合的な場合です。
例えば、登山家にはあらゆる知識、体力、経験などが必要です。体力が弱みだからといって誰かにカバーしてもらうことはできません。これが、弱みを克服しなければ、強みを発揮した成果が得られない場合です。頂上を制覇するためには、弱みを克服しないと成果が出せません。

4-2. 自分にとってのベストを知る

自分本来の生活パターンを観察して、その中でベストな状態を見つけ出すことは、とても重要です。ベストパフォーマンスが出せる状態を知りましょう。
ここで注意して欲しいのは、世間一般の価値観に囚われないことです。あくまでも自分にとってどうなのかだけを探すようにしてください。

ベストな時間の使い方を知る

ここでいう時間の使い方とは、スケジュール帳管理方法や、目標達成のための作業分割などではありません。
どのようにすれば強みを最大限発揮できるかという視点で、「強みを活かす時間の長さ」、「それを行う時間帯(朝、昼、晩など)」、「スケジューリング」の3つを探します。

ベストな健康状態を知る

心と体の充足は大切です。両方が満たされていれば、自動的に強みは発揮されます。自分がどうすれば健康になり、どのようにすれば不健康になるかを測定します。主に、食事、水、睡眠を観察します。

・食事:毎日の食事をメモ書きして、1ヶ月記録する。翌日の体の状態と前日の食事の間に関係があるかどうかも記録する。
・水:食事と同じ方法で、体に相性の良い水はどれかを探る。
・睡眠:何時間・どのようなコンディションで眠ったら翌日いい状態/悪い状態になるのかを記録。自分の睡眠ペースを正しく知る。

ベストな情報を知る(強みを最大化するための情報の取捨選択)

強みを最大化するために必要不可欠な情報を、積極的に得る生活習慣を作ります。自分にとって本当には大切でないのに、「大切だと信じている」だけの情報を省くようにします。日常生活の行動が、強みに必要な情報を得るための活動になっていると、更に好ましいです。

ベストなコミュニケーションスタイルを知る

ありのままの自分で人と接したときに、どのような人と一緒であれば自分の強みが最も生かされるのかを観察し、見分けます。

強みは、それを正しく評価できる人との間で成果を最大限に発揮します。あなたの強みを否定する人との間では、決してうまく機能しません。自分がありのままの姿でいたときに「誰と相性がよく」「誰が強みを否定するのか」を見分けることが必要です。
強みを最高に生かすために、妥協してはならないところは断固として妥協しないようにしましょう。相性のいい人とうまく付き合い、相性の悪い人とは付き合いを断つ必要があります。

リソースを活かす

強みは無自覚のままに高い成果がだせることなので、無自覚なまま放っておくと強みを発掘する前に戻ってしまいます。強みを発掘し、自らの強みとして認識したものはどんどん使いましょう。漫然と強みを使っていた状態から、意識的に強みを使う状態へと変わらねばなりません。

この時に、「やらなくてはならないこと」や「やりたいこと」ではなく「できること」から行うのが大切です。つまり、既に持っている「強み」などの資産(資源)から始めるということです。
また、プロセスを考えるのではなく、いちばん大切なものを1番に選ぶことも重要です。

4-3. 「できる」ことから行う

既に持っている強み資産(資源)から始める

強みを最大化するときに必要なのは、目的地からではなく足元から始めることです。
外の世界から決められる「やらなくてはならないこと」や、気分を優先している「やりたいこと」からは始めません。また、目標、ビジョンなど「今、ここにないもの」や、過去の経験、熟練したスキルなど「そもそも強みでないもの」からも始めません。
今持っている強みを使ってできることを、小さく試すことから始めましょう。小さく試すことには、失敗しにくい、軌道修正が簡単という2つのメリットがあります。

いちばん大切なものを1番に選ぶ

もう一つ、「できることから行う」ときに重要なのが、いちばん大切なものを1番に選ぶことです。2番め以下に大切なものからスタートしないで、最も大切なものを真っ先に選びます。

簡単なことを書いているように思えますが、これをしない/できない人は多いのです。多くの人は、5番めぐらいに大切なものからスタートするような思考パターン、行動パターンを持っています。

なぜそんなことが起こるのかというと、学校教育によるところが大きいです。日本に限らずほとんどの国において、単純・簡単なことから始めて複雑・高度なことへと段階的に学ぶよう、教育はプログラムされています。このように、「できなかったことが段階を踏んでできるようになる」というパターンを、私たちは無意識裡に身につけています。
段階のプロセスは、「いちばん大切なものをいちばん最初に手に入れるのは不可能である」という前提ではじまります。

この学習パターンと同じ要領で2番以下からスタートして、1番に向かってピラミッドを上がる方法(例えば、4番からスタートして、3番、2番、1番と進める方法)では、できるところから始めてもうまく強みを発現しにくいです。

うまくゆかない方法を打開するには、いちばん大切なものを1番に行う必要があります。ただ、これは優先順位や目標設定とは全く異なります。いちばん大切なものを見定めるには、内省と長い目で見る視点の両方を必要とします。

内省とは、自分の軸となる部分を見返し、考え、感じて、判断することです。状況や状態によって少しずつ変化するものなので、いちばん大切なものが何かが変わることはよくあります。
すなわち、内省し続けなければ、その時いちばん大切なものを1番に選べないということになります。

長い目で見るというのは、数年先や人生の流れから考えると今はいちばん大切ではないかもしれないが、長い目で見たら今これをやっておくのが自分には最も大切だというものを選ぶことです。

内省と長い目での視点については、第5章で詳しく述べます。

4-4. プラスの世界

強み発掘後、強みを伸ばそうとするときには、プラスの世界、つまり、既に手元にある資源(資産)に注目して、確実に伸ばしていくことが大切です。

既にプラスの世界にあるものに注目して、確実に伸ばしていく。
確実に伸ばすということは、伸びる触れ幅が小さいので達成感や満足感を感じることができません。ある意味楽しくない方法だと思います。
その代わりに、確実に積み上げる以外では得られない成功や幸せを獲得できます。

プラスの世界とマイナスの世界

例えば、「時間がない」「なにもかも自分の思い通りにならない」「○○しなければならない」などの言葉を多く使う人は、その言葉の背景に「自分では選べない」という心理があります。「会社の出勤時間を守らなければならない」とか、「上司が残業しろと言ったら、たとえデートが入っていても残業するものだ」とか、ルールを自分以外の誰かが決めているという考え方です。

これは言い換えると「物事は〜しなければならない(=must)」と決まっているという世界(マイナスの世界)で身動きが取れていなくなっている人の考え方です。

こうやって身動きが取れなくなっている人に、ポジティブ思考や脱出の方法としてのスキル(時間管理やアファメーションや目標設定)を、自己啓発や能力開発では教えます。 また、精神世界のジャンルでは「好きなこと」や「喜び」「豊かさへの目覚め」などを教えます。

これらの方法は、「物事は〜しなければならない(=must)」の世界観で身動きが取れなくなっている人に、「それは、本当にしたいことなのか(=want)」の世界観を教えてくれます。こういった方法は世の中にたくさんあります。そして、これで現に物事がうまく回りだす人もたくさんいます。

しかし、この方法では、圧倒的なマイナスからのスタートで、マイナス180をマイナス10にするぐらいの効果しかありません。前向きな姿勢やポジティブ思考は、マイナスを軽減させられるものの、プラスを生み出すことには決して貢献しません。

例えば、風邪をひいた人(マイナスの状態の人)が健康になるために行うことは、とにかく寝ることと消化のいいものを口にすることです。それに対して、既に健康な人(プラスの状態の人)がより良くなるために行うことは、適度な運動と栄養豊富な食事を十分に摂ることのはずです。健康な人がよく寝て消化器に負担の少ない食事を食べ続けていたとして、さらに健康になれるでしょうか?
そもそもマイナスを軽減する方法と、プラスを伸ばす方法は違うのです。


強みは無意識にできるから放置していても構わないという発想をやめ、意識的に伸ばし、ベストな状態や活躍の場を自ら見つけ出してそこで強みを使うようにすると、ますます精度が上がり、結果として成果も楽に出せるようになります。
手入れをしない雑草だらけの庭でも花は咲きますが、雑草を取り除き、日当たりを改善し肥料を与えればもっと綺麗で大きな花が咲きます。この作業はなんとなくの感覚でやるのではなく、データに基づいてやったほうがいいに決まっていますね。そんなことを第3章と第4章ではお伝えしました。
最後に第5章では、強みを生かす人生を送るうえで徹底して欲しいことをお伝えします。

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