「好きな仕事で成功したい」とは、誰もが思うことなのかもしれません。好きなことで稼げるのは幸せ、仕事を人生の一部として楽しみたいと思う人は、多いと思います。

ですが、「好き」だけで大きな成功を得られるかというと、そうではありません。むしろ「好き」を仕事にしてはいけないケースの方が多いのです。

今回は、「好き」を仕事にしてはいけない5つの理由を具体的にご紹介しようと思います。

1)サービスを受ける側だからこその「好き」がある

自分が好きな商品を売りたい、自分がワクワクするものを発信したい、そう思う人は多いでしょう。この、「好き」と思う気持ちや「ワクワク」は、実は気分の問題なので、それが長続きするかどうか、うまくビジネスとして軌道にのるかどうかは関係がないのです。

例えば、自分の好きなアイテムを販売する仕事を始めたとしましょう。好きな商品を扱うので、その商品についての知識は豊富にあります。語らせたら、何時間でもしゃべることができるかもしれません。

ですが、その商品を売るためには認知活動が必要です。知ってもらうために人に会い、発信し、認知を広げていかなければなりません。顧客への対応、お金の管理、さまざまな仕事を付随してやらなければならなくなります。

商品やサービスを提供する側になったら、「好き」という気持ちが薄れたり、ともすると嫌いになったりすることもあるんです。やりたいことだけをやることが、ビジネスではありません。うまくいく、ということと、好きであるという気持ちは、リンクしないのです。

2)「好き」を仕事に、は誰もが成功するノウハウではない

好きなことをして成功する人もいます。それができれば、確かに良いかもしれませんね。
ですが、その人は本当に「好きなこと」だけをやって成功したのか、丁寧に見る必要があります。

ビジネスとして成功するかどうかは、マーケットがあることと、そのマーケットでニーズがあること、この2つが必要になります。ニーズがないものは、売れません。どんなに好きなことでも、ニーズがなければビジネスにならないのです。

好きなことを仕事にして成功した人は、「好きなことを仕事にしたらいい」と自分の成功したノウハウを語ります。それは確かに間違いではないのですが、「すべての人が必ず成功するノウハウ」ではないのです。マーケットとニーズを無視してビジネスは成り立ちません。

例えば、ニッチな趣味が大きなビジネスにつながりにくいのは、一部のファンがいても大多数の人が求めているものではないからです。世の中にどの程度知られていてどのくらいの人が求めているものなのかが関わってきます。

たまたま、好きなこととマーケットのニーズがマッチする場合は良いでしょうが、そういうケースは多くはありません。感情や気持ちを優先せずに、マーケティングをしっかりやってニーズを把握する方が、確実に売上をあげることにつながります。

「好き」が仕事になっている場合は、その背景にマーケットとニーズがどのくらいあるかを無視して語ることはできません。そこをわかった上で、自分に何ができるかを考えていくべきでしょう。

3)「好き」だからこそできない「捨てる・やめる」

「好き」という感情があると、強いこだわりから正確な判断ができなくなることがあります。ところがビジネスを育てる過程では、作業や事業を精査したり、別の仕事にシフトチェンジしたりする必要が出てくることがあります。

自分のビジネスが大きく成長するチャンスであったり、逆にうまくいかない時にうまく運ぶ方向への方向転換であったり、どのような理由にしろ判断を強いられる場面があるでしょう。その時に「好き」という気持ちがあると、「好き」という気持ちを優先しこだわってしまい、「捨てる・やめる」という判断が難しくなることも。

そもそも、そういった局面で「好きでずっとやってきたことだから、簡単にやめることは考えられない」と、最初からやめるという選択肢を持とうとしない人もいるでしょう。好きであれば好きであるほど、長く続けていれば続けているほど、判断は難しいものになるかもしれませんね。

ですが、そこで「好き」である気持ちはさておき、自分のビジネスと人生にとって何が最善か考えることが重要なのです。好きだからうまくいくわけではないと、先ほどの項でも述べました。うまくいくにはどうしたら良いかを一番優先して考えた時に、気持ちや感情がどういう状態かはあまり関係がないのです。

4)「好き」=良質であるとは言い切れない

好きだからという理由でビジネスを始めると、うまくいかない場合はうまくいくまで頑張ろうとします。多少うまくいかなくても、できるまでやろうとしてしまいます。好き=最初から高いパフォーマンスがたたき出せるとは限りませんね。

頑張ろうとすることは悪いことではないですが、「好き」であることと「自分らしい」ことは違います。好きだからうまくいくようにしたい、そのために頑張らなければと思うと、「自分らしさ」から離れてしまうことがあるのです。

自分らしくないのに努力をして、良質なサービスを提供できるように頑張ってしまう、ということを繰り返すと、いつしか「好き」という気持ち自体が薄れてくることもあるでしょう。

「好きこそ物の上手なれ」ということわざもありますが、それがすべての人、すべての仕事にあてはまることではないのです。好きかどうかは別として、その物事を自分はうまくやれるのか、客観的な視点で考えることが大切です。

5)どうして「好き」を仕事にしたいと思うのか

どうして、世の中には「好きなことを仕事にしなさい」という人が多いのでしょうか。その「好き」という心理の裏側には、どのようなことが隠れているのでしょうか。

「好き」という感情に強くこだわる人には、その背景に「自分は満たされていない」という心理が隠れていることがあります。今現在、(多くは親子や夫婦などの人間関係において)自分が満たされていないから、仕事など別の物事で「満たされること」を求めることがあります。

「好き」という感情が満たされていないから、人間関係ではなく仕事にそれを求めて「好きなことを仕事にすべき」となってしまうのです。

本来満たされるべきところが満足できていないのに、仕事でそれを求めて本当に自分自身が満たされることがあるのでしょうか?代わりを求めても、満たされることはありません。また、ビジネスにおいては満たされない感情の代わりに頑張ったとしても、うまくいくはずはないのです。

まとめ

今やっている仕事は好きなことです、という人はラッキーな人かもしれませんね。ですが、それを続けていくかどうか、続くかどうかを今後は丁寧に見ていく必要があるでしょう。ビジネスとしてうまくいくかどうかと、どのような感情を持って仕事をするかは、あまり関係ないのです。

嫌いなことをわざわざ仕事にしたい人はあまりいないと思いますが、好きでも嫌いでもどちらでもない、という人は多いのではないでしょうか。ビジネスで重要なのは、自分の気持ちではなく顧客のニーズです。

ビジネスがうまくいくためには、自分の「強み」に注目し、強みを生かすことで成果を得ることができるでしょう。顧客のニーズと自分の「強み」が合致したところを探すと、早く確実に売上を上げることができます。感情に左右されずに、自分自身がどんな強みを持っているのか注目していきましょう。